結婚前に彼氏が既婚者だと知った新婚の夜、久我正輝(くが まさき)が私・池田寧子(いけだ ねいこ)を抱きしめたまま突然言った。
「寧子、一つ話しておきたいことがある。俺には、法律上すでに妻がいるんだ。
だから明日は婚姻届を出しに行けない。でも、その紙一枚以外のものなら、お前が望むもの、なんでも満足してあげるから」
その言葉で、私は頭の中が真っ白になった。
「あなた……結婚してたの?なんでこんなに長い間、一度も言ってくれなかったの?」
彼は起き上がって服を着始める。首筋には、私がつけたキスマークがまだ残っている。
「寧子、俺が一番愛してるのはお前だよ。だって、十年も一緒にいたんだ。
彼女は……昔、親が一方的に決めた相手なんだ。引き受けたからには、責任は取らなくちゃならないだろ?」
私は乱れたベッドの上に力なく崩れ落ちた。体の下には、さっきまでの温もりがまだ残っている。
テーブルの上に置いた祝儀袋が、目にまぶしい。それが、私を嘲笑っているようだ。